1本の木を使い切れ 新型建材や発電燃料に活用
新型の集成材「クロス・ラミネイティド・ティンバー(CLT)」
バイオマス発電
ペレット生産
岡山県真庭市 中島浩一郎氏 銘建工業 代表取締役
の取り組み
の取り組み
電力不足、地球温暖化、荒廃した林業、農業の衰退――。日本の産業社会が抱えるこうした困難な課題をそれぞれ克服する道筋を示している企業がある。集成材最大手の銘建工業(岡山県真庭市、中島浩一郎社長)は30年前から手がけてきた木質バイオマス発電を自治体や森林組合などと組んで事業化するほか、欧州を中心に急ピッチで普及している新型の集成材「クロス・ラミネイティド・ティンバー(CLT)」の本格生産に近く乗り出す。CLTは7~10階建ての中高層建築の利用が見込まれ、戦後大量に植えられた国産スギの有力な用途になると期待されている。同社は農業用ボイラー向けの木質ペレットのトップメーカーでもあり、「1本の木をまるごと使い切る」事業戦略に一段とアクセルを踏み込もうとしている。
■CLT工場建設、大幅前倒し
「“解禁”の時期が大幅に早まりそうなので急いで体制づくりをしなければ」。中島社長は今、CLT専用工場の建設計画を大幅に前倒しする方向で用地選定を進めている。候補地は地元岡山のほか、グループ会社の高知おおとよ製材(高知県大豊町)がある高知県では尾崎正直知事が先頭に立って誘致活動に取り組み、福島県や山形県などからも熱心なアプローチがあるという。
国内では、戦後植えられたスギやヒノキなどの人工林で50年以上経過した高齢樹の割合が約4割になり、2017年には約6割に達する見込み。だが、住宅建築の低迷などで木材需要は減少。1990年代に1億立方メートルだった国内木材需要は2012年には7000万立方メートルに落ち込んでいる。さらに建材向けの木材は6~7割を輸入材が占めている。「国産材を使いたくても使えない。価格の問題だけではなく、安定した供給力の面で国産材は輸入材にかなわなかった」と中島社長は説明する。需要不振で山にカネが落ちないため、木々の成長に必要な間伐などが行われず、その結果、山林の荒廃が進むという悪循環に陥っている。
銘建工業は1970年に集成材の製造を開始。当初は北米産の木材(米材)を使用していたが、92年末に米国で環境保護団体が国有林の伐採禁止などを求める訴訟を乱発して製材価格が急騰する「ウッドショック」が発生したのをきっかけに欧州材に切り替えた。97年にはオーストリアの大手製材メーカー、シュバイクホファー社と折半出資の合弁会社ラムコ社(ソレナウ市)を設立、ウィーン郊外に集成材工場を建設して生産を始めた。
欧州で木材ビジネスを拡大する中で出合ったのがCLT。90年代にドイツで開発された建材で、「ラミナ」と呼ばれる人工乾燥した挽(ひ)き板を繊維の方向が直角に交わるように積み重ねて接着したもの。厚みのあるパネルにできるため、耐震性や断熱性、遮音性に優れているほか、重さが鉄筋コンクリートの6分の1と軽量なことから工期短縮などの効果でビルの施工コストを大幅に削減できる利点がある。
林業を基幹産業と位置づけるオーストリアを中心に2000年ごろから普及が拡大、09年にロンドンでCLTを構造材に使った9階建てのマンションが建設されたのをはじめ、ウィーン郊外の大型ショッピングセンターなどに続き、13年にはオーストラリアのメルボルンで10階建てのマンションが完成した。北米ではツーバイフォー工法とCLTを組み合わせた“ハイブリッド工法”の建築物が増えているという。
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